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最高裁判所第一小法廷 昭和24年(れ)1525号 判決 1949年11月10日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人中嶋武雄上告趣意第一点について。

記録によれば、原判決の証拠として挙示している被疑者網野睦夫に対する訊問調書が昭和二三年三月一八日附の司法警察官警部代理巡査部長飯野厳作成に係る被疑者訊問調書を指すものであること。本件逮捕状の執行によって、被告人網野睦夫を被疑者としてその自宅において逮捕したものであって、現行犯逮捕又は緊急逮捕でないことは所論のとおりである。しかし、逮捕状の執行による被疑者逮捕の場合には刑訴應急措置法八條四号の規定により前号掲記の旧刑訴一二七條及び一二九條所定の手続をも準用すべきものと解するを相当とするから、逮捕状によって逮捕された被疑者たる被告人網野睦夫を受取った警部代理巡査部長飯野厳は、旧刑訴一二七條によって同人を訊問する権限を有するものといわなければならぬ。されば、原審がその訊問調書中の供述記載をも証拠として判示事実を認定したからといって、原判決には所論のように証拠とすることのできないものを証拠として事実の認定をしたという違法は存しない。論旨は理由がない。

同第二点について

原判決書の被告人の氏名が綱野睦夫と表示されていて網野睦夫と記載されていないことは所論のとおりである。しかし記録上右表示は網野睦夫の誤記であること明白であるから、原判決には所論のような違法はない。論旨は理由がない。

よって旧刑訴四四六條に從い主文のとおり判決する。

この判決は裁判官全員の一致した意見である。

(裁判長裁判官 沢田竹治郎 裁判官 真野 毅 裁判官 齋藤悠輔 裁判官 岩松三郎)

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